フェイスシールド開発チーム
岡田(2001年入社)フィルター製品技術部
フェイスシールド開発チーム
高階(1989年入社)マニュファクチャリング・テクノロジー・エンジニアリング部
フェイスシールド開発チーム
坂本(2012年入社)医療用製品事業部 マーケティング部
15%カルチャーを活用して3M™ フェイスシールドを作成されましたが、どのようなきっかけでこのメンバーが集まり、活動することになったのでしょうか?
コロナ禍で、社会に役に立てる事がないかと悶々としていたところ、山形事業所の同僚から「何かできることをやりませんか?」との掛け声があがり、その呼びかけに共感しました。初めはマスクの生産ができないか検討していましたが、自分たちだけでやるのは難しい事が分かり、マスク以外に提供できる個人保護具(Personal Protective Equipment 通称PPE)という観点で、フェイスシールドにたどり着きました。
私たちメンバーは、「社員一人ひとりの自発的行動を奨励する」 「各人を自己の可能性に挑戦させる」 といった3MのDNAがフェイスシールドを作らせたのだと感じています。
15%カルチャーでプロジェクトを進めるにあたり、実際の業務とのバランスのとり方や、メンバーの方の時間の調整などが難しかったと思いますが、どのように対応されたのでしょうか?
在宅勤務が推奨されている状況下でのプロジェクトだったので、社内会議は基本的に全てビデオ会議で行いましたが、結果的にこれによって効率よくスムーズに試作品のフィードバックやレビューを行うことができたのではないかと感じています。メンバーがそれぞれ本業も忙しい中で活動していたので、期間中は本当に会議と会議の合間の空き時間を縫うようにチャットやメールでやり取りをして、必要であればそのまま短時間電話で打ち合わせをしたりするなどしていました。できるだけ早期に実現したかったので、限られたスケジュールの中で時間を見つけながら、遅れなく物事を進めていけるよう努めていました。意識してコミュニケーションを密に取ろうとしたことが良い結果を生んだのだと思います。
製品を制作していくにあたり、大変だったことや苦労した点などはありますか?
(岡田)個人レベルでの少量寄付のつもりで始めましたが、ある程度の量を作らないと必要としている人たちを助けられないとのメンバーの助言がありました。更に3Mブランドを冠することでとっても大変になりました。何故なら、機能面でも安全面でも最先端の製品をお使いいただけるように、個人保護具を製品として取り扱っている事業部で用いられている新製品導入プロセスを通すと決断したからです。ここからチームとしてのパワーが発揮され、困難を乗り越えた最終製品は驚くべき進化を遂げ、誇れる3M製品となったと自負しています。
(高階)製造の生産性を高くして一日も早く製品を出荷できるように設計を単純化して部品数を3個まで絞り込むなどの工夫をしました。
しかしながら、当時はCOVID-19の影響でグローバルのサプライチェーンが一部混乱しており、材料(特に医療関係の材料)の確保が難しい状況でした。
さらに試作から量産までの期間が短く、かつ、自分自身も出勤ができないなどの制限があったので、通常のように製造現場で現物を確認しながら品質を作り込んでいく機会が設けられず、リモートでシステムなどを駆使しましたが、製品ラインの立ち上げには苦労しました。
この寄付品は3Mとして医療関係者が求める高い品質の作り込みが目標だったので、通常の新製品開発と同等な書類等の準備が必要であり業務が著しく増えることになりました。
すでに3Mがビジネスをしている市場なだけに3Mらしさ、高い品質、信頼性を担保する体制づくりが求められ、通常の新製品同等の要求があったことはプレッシャーでした。
(坂本)通常の新製品導入であれば試作品をユーザーに試してもらい、そこから得られた知見を活かして改良を重ねていくことができますが、今回のプロジェクトは時間的・環境的な制約があり、それができない中で実現する必要があるというところが大きなチャレンジだったと思います。試作品を確認する際には社内の色々な部署の人に見てもらい、様々な使用場面を想定しながら意見を出し合うことで、理想に近いものができたのではないかと感じています。
実際に15%カルチャーを使ってみて、どのように思われましたか?
(高階)まずは、市場に自分たちの製品を提供し、お客様である医療従事者の方々を喜ばせようという強いマインドセットがなければ、出荷までは到達せずに途中で挫折したと思います。今回はメンバー3名でお互いの助け合いがあったのでなんとか最後までやり遂げることができました。
15%カルチャーで勤務時間の15%を確保できたとしても予算が無いとサンプルも作れないので、上司のサポートが必須です。ですが、今回は社長を始め上司の理解も得ることができ、資金を提供してくれたことで実現できました。
コロナ禍で、多忙な医療用製品事業部のメンバーが、ボランティア活動でありながら、組織を挙げて活動に協力してくれたことは嬉しい驚きでした。15%カルチャーの精神は技術、製造関係だけでなく、3M社員が皆、持っているということをあらためて認識しました。これは、他社に真似できない貴重なカルチャーだと思いますし、今後も大切にしなくてはならない活動だと感じました。
(岡田)3Merとして多くのチャレンジをして来ましたが、個人的にここまで形になったのは初めてです。今回の成功はこの3人のメンバーだけでなく多くの方の協力があっての事ですが、惜しげもなく協力してくれた3Merとそれが息づく企業文化に“いいね!”を付けたいと思います。
(坂本)正直言うと、個人的には本業も100%以上のフル稼働の中で、ビジネスとは少し離れたこのプロジェクトに時間を割けるのかという不安が最初にあったのですが、実際にやってみると普段の業務ではコンタクトしていないメンバーとの協業や、今まで経験したことのないプロセスでの開発を通して本業にも活かせるであろう多くの気づきや学びがありました。
医療機関に製品を提供することができ、また社長賞も受賞することができました。社会にも貢献できるプロジェクトだった思います。このプロジェクトを通じてご自身の業務に対して何か活かせることはありましたか?
(高階)いままで医療用製品事業部の製品開発には関わったことがなかったのですが、短期間に多くの方々と深い関係を築くことができ、新しい社内のネットワークを作れたことは自分の業務にとっても大きな収穫になりました。今後も課題があればきっと、相談することになるに違いないネットワークを築くことができました。
(岡田)製品開発する立場としての学びは大きかったです。まず、非常に限られた時間の中で、どういったテクノロジーを使い、どの様な製品にしていくかのメソッドを学ぶことができました。そして、奇しくもコロナ禍で始まったリモート会議手法の有用性を発見することもできました。
(坂本)このプロジェクトを通して、改めて医療用製品事業部のビジネスの意義を感じることができたことは今後の大きな原動力になりました。また、短期間でかつ限られた条件の中で、メンバーで協力して一つのものを形にし、世に送り出すという経験から得られた瞬発力のようなものは、今後の新製品導入や新たなプロモーションの実行の際にも活かすことができると考えています。
同じように社会に貢献したいと思っている方々にメッセージやアドバイスをお願いします。
(高階)新しいことを始めると周囲から反対されることが多いと思いますが、自分が強い気持ちを持ち、周囲に相談すれば、社内から専門知識や経験豊富なメンバーが集まります。その後は社内で取り組みをサポートしてくれるようなスポンサーを見つけながら、前進あるのみですね。活動中は思いもかけないハードルがたくさん出現するので、心が折れないように、お互いを理解し合えるチーム作りが大切だと思います。この助け合いがないとゴールにたどりつくことはできません。自分の意思でこんな活動ができる3Mという会社は素晴らしい会社だと思います。
(岡田)社会貢献は一つの結果にしか過ぎません。もちろん失敗も結果であり、糧として多く吸収することができました。 チャレンジは一人でもできますが、仲間がいるとそれは持続し、成功の形も多く描け、思いがけない事も。とにかく、やってみましょう! 宜しければご一緒に!!
(坂本)このプロジェクトは「社会に貢献しよう」という大きなスローガンを掲げて始まったというよりも、岡田さんの「困っている医療従事者の力になりたい」という優しさと熱意でスタートし、それに賛同する人がいたことで実現した活動だと思っています。「こうしたい」という想いを伝えれば、それに応えてくれる人が3Mには必ずいると思います。発信してみることが第一歩になるのだなと今回私自身が身をもって学んだので、「何かに貢献したい!」という方にも、発信してみることの大切さをお伝えしたいです。