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フットケア時における眼への曝露リスクとその対策

フットケア時における眼への曝露リスクとその対策

  • 六甲アイランド甲南病院 看護支援センター 副師長 皮膚・排泄ケア認定看護師 松尾 知子 先生

    六甲アイランド甲南病院
    看護支援センター 副師長
    皮膚・排泄ケア認定看護師
    松尾 知子 先生

  • 同病院 看護支援センター 師長 感染管理認定看護師 窪田 順江 先生

    同病院
    看護支援センター 師長
    感染管理認定看護師
    窪田 順江 先生

糖尿病患者のフットケアでは、グラインダーを使った爪の研磨や肥厚した角質の除去が行われる。その際に発生する細かい皮膚片(粉塵)には、白癬菌などの感染性病原体が含まれていることが多く、患者の足を至近距離で処置するフットケアには眼への曝露リスクがある。そこで今回、六甲アイランド甲南病院でフットケア時の眼への飛散リスクの実情と眼の防護への取り組みについてお話しいただいた。

フットケア時には眼への感染曝露リスクも!

―フットケア時には具体的にどんな場面で眼への飛散リスクがありますか?

松尾   飛散リスクを最も感じるのは、グラインダーを使って患者さんの爪や肥厚した角質を削る処置の時です。フットケアの対象となる患者さんは重症の足病変を抱えた方が多く、看護師は患者さんの足を傷つけないように集中して処置をしています。そのため、処置の最中は看護師の顔と患者さんの足の距離が近づき、鼻や口、眼への曝露リスクは高くなります。

窪田   糖尿病でフットケアが必要な患者さんは白癬菌などの真菌や細菌が足表層に付着していることが多いので、グラインダーで削る際に飛び散る細かい皮膚片(粉塵)にも菌が含まれていると考えられます。したがって、フットケア実施時は、適切な個人防護具(PPE)を着用する必要があります。

松尾   グラインダーには、水が出るスプレータイプと、粉塵を吸い込むバキュームタイプがあります。現在、当院ではスプレータイプを使っているため、粉塵の飛散は比較的少ないのですが、バキュームタイプを使っていた頃は、粉塵がそのまま飛んでくるのを経験したことがあります。

  • 図1 フットケア時の眼の保護

    ―フットケア時のPPE着用についてお聞かせください。

    窪田   PPEは感染曝露から自分を守るものです。フットケア時に発生する粉塵に感染リスクがあるのであれば、曝露防止対策として眼、鼻、口を防護するためにアイガード、マスク、ガウンといったPPEの着用は重要であると思います(図1)。

     

    松尾   日本フットケア学会での研究発表で、フットケア時には粉塵が広範囲に飛散することを知ってから、一層危機感が強くなり、眼の防護を含めたPPE着用をフットケアを行うスタッフ全員で徹底するようになりました。

眼の防護具は、広い視野の確保と防護範囲の広さが必須

―フットケア時の眼の防護具として3M™ マスクにくっつくアイガード(以下、アイガード)を選定された理由についてお聞かせください。

  • 図2 フットケア用品カート アイガードも常備している

    松尾   従来はリユースのメガネタイプの防護具を使っていましたが、処置中にずれたり、視野が狭いため処置をしにくいといった意見や、使用後の衛生管理の問題もありました。また、普段からメガネをかけているスタッフにとっては、メガネの上からの防護具着用は負担があり、敬遠されがちでしたので、防護具着用の遵守率が低いという状況がありました。そこで、何か良いものはないかと模索していたある時、窪田師長からアイガードを紹介されました。スタッフ全員で試用したところ、眼から額まで広い範囲が守られ、加えて視野も広く非常に好評でした。ゴーグルの場合、曇ることが多く、細かい処置をしている時にはかなり危険でしたが、アイガードはスタッフ全員が安心して、しかも簡便に使用できることから正式に採用することにしました。現在はフットケア用品を載せたカートにアイガードも常備し(図2)、フットケアを行うスタッフ全員がアイガードを使っています。

     

    窪田   アイガード採用前は、メガネ使用者のゴーグル着用率が低いというのが課題でした。しかし、メガネは防護範囲が狭く、眼との間に隙間がありますから、防護具としての機能を果たしませんし、実際に曝露の報告もあります。その点、アイガードは、メガネの邪魔にならないので使いやすいですね。しかもサージカルマスクは日常的に着用しているので、眼の防護が必要な時にアイガードをマスクにくっつけるだけで準備できる手軽さが大きな利点ですし、遵守率の向上につながると考えています。

―フットケア部門と感染管理部門の円滑な連携を感じますが、心がけている点はありますか?

松尾   当院では、各分野の専門看護師や認定看護師はすべて看護支援センターに所属していて組織横断的な活動をしていますので、普段から専門分野間のコミュニケーションは良好だと思います。その中で感染曝露のリスクについては、窪田師長に指導をいただきながら、フットケア業務に活かしていくよう努めています。

 

窪田   私たちは感染の視点から常に曝露リスクに注目し、どんな場面でPPEが必要かを見ています。先ほどお話ししましたようにフットケア時に発生する細かい粉塵は、白癬菌などを含んだ感染性物質であると考えますから、至近距離で処置をする看護師の眼への曝露防止については、感染管理の立場からしっかりと指導していきたいと考えています。

 

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「自分の眼を守る」という意識を高く持つこと

―眼の防護に関する今後の課題はありますか?

窪田   現在、当院では、アイガードは主にフットケア時の使用が中心ですが、病棟での吸引や排液処理の場面でも手軽に使えるように整備して、スタッフ一人ひとりが自分の眼を守るという意識を高めてもらえたらと思っています。

 

松尾   今のところスタッフ間で眼への飛散リスクに対する共通認識を持つことができているので、今後はこれを継続していくことが大切だと思っています。また、フットケアは透析室でも行うことがありますので、他部署とも情報共有していきたいと思っています。

 


―最後にフットケアに携わる方々へメッセージをお願いします。

松尾   フットケアを受ける患者さんは、やはり足の病変のことで困っておられる方ばかりでスタッフも必死で処置を行います。しかし、眼への曝露リスクが少なからずあることも事実ですから、フットケア時には眼を守ることを忘れないでいただきたいですし、その意識を継続的に持って取り組んでいただければと思います。

 

窪田   口や鼻が感染の入口という認識はあると思いますが、眼に関してはリスク認識が低いように感じます。しかし曝露リスクはありますから、患者さんが必要とするフットケアを長く安全に続けていただくためにも、自分の眼は自分で守るという意識を高く持っていただきたいですね。

 

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収録:2017年2月7日 六甲アイランド甲南病院にて