失禁関連皮膚炎(IAD)対策

近年、褥瘡対策に関連する学会で着目されているテーマとして、「スキン-テア」、「MDRPU(医療関連機器圧迫創傷)」、「IAD(失禁関連皮膚炎)」の3つがあり、IADについては2019年にベストプラクティスが刊行されています。
また、入院時の患者に対して作成する「褥瘡に関する診療計画書」の中でも危険因子の1つとして尿失禁や便失禁が「あり」の場合、看護計画を立案し実施することが求められています。

失禁関連皮膚炎(IAD)とは?

  •  失禁関連皮膚炎(IAD)とは?

    失禁関連皮膚炎(Incontinence Associated Dermatitis:IAD)とは、「尿または便(あるいは両方)が皮膚に接触することにより生じる皮膚炎である」と定義されています。IADは疾患を示す用語ではありません。この場合の皮膚炎とは、皮膚の局所に炎症が存在することを示す広義の概念であり、その中にいわゆる狭義の湿疹・皮膚炎群(おむつ皮膚炎)やアレルギー性接触皮膚炎、物理化学的皮膚障害、皮膚表在性真菌感染症を包括します。

    出典:「IADベストプラクティス」 一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会(2019)

IADの発生メカニズム

  • IADの発生メカニズム
  • IADは、失禁のある患者で、尿や便が皮膚に直接触れ続けていることで皮膚が浸軟したところに、摩擦やずれ、化学的刺激、あるいは感染が加わって発生します。


失禁のある患者のアセスメント

IADの予防と発生時の対応を考える上で、局所部位について「皮膚の状態」と「付着する排泄物のタイプ」を評価します。

IAD-set(IAD重症度判定スケール)

日本創傷・オストミー・失禁管理学会では、「IAD-set」というツールを用いてアセスメントすることを奨めています。8つの局所部位について「皮膚の状態」と「付着する排泄物のタイプ」を評価し記録します。

・皮膚の状態:皮膚障害の程度とカンジダ症の疑いを評価
・付着する排泄物のタイプ:便と尿を評価

・評価する部位:下記の計8部位
1.肛門周囲
2.臀裂部
3.左臀部
4.右臀部
5.性器部(陰唇/陰嚢・陰茎)
6.下腹部/恥骨部
7.左鼠径部
8.右鼠径部

出典:「IADベストプラクティス」
一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会(2019)

  • ブリストル便性状スケール

    便の硬さの見解を統一するためにも「ブリストル便性状スケール*」を用いることが推奨されています。

  • ブリストル便性状スケール

IAD対策

IADの予防・管理の基本は、皮膚に付着した排泄物を除去し、皮膚を清潔に保つための「清拭・洗浄」と、排泄物による皮膚生理機能への影響を正常化するための「保湿」です。
「紅斑」、「びらん」、「潰瘍」、「感染の疑い」がある場合は、診断・治療は主治医や皮膚科医に、ケアはET/WOCナースに相談し、コンサルテーションを受けましょう。

「軟便」「水様便」「尿感染の疑い」がある場合には、標準的スキンケアにくわえて「保護」を追加し、排泄物の付着を防ぎましょう。

  • IADにおける標準的スキンケア

    IADにおける標準的スキンケア

  • ふれさせない・ふやけさせない

    ふれさせない・ふやけさせない

    排泄物が直接皮膚に触れると刺激になるため、撥水効果のある保護クリームや被膜剤を塗布して「ふれさせない」ことが対策となります。
    また、皮膚がふやけることで皮膚のバリア機能が低下するため、皮膚を密閉せず、水分蒸散を妨げない製品で対策をとりましょう。

付着する排泄物のタイプ 軟便・水様便・尿感染の疑い 標準的スキンケア(清拭・洗浄と保湿)+保護
皮膚の状態 紅斑・びらん 標準的スキンケア(清拭・洗浄と保湿)+保護+コンサルテーション
潰瘍・感染の疑い コンサルテーション+治療

皮膚の保護 3M製品のご紹介

IAD対策にご使用いただける3M™ キャビロン™ スキンケア製品をご紹介します。皮膚状態に合わせて適切な製品をご提案いたします。

製品 適応の皮膚状態
健常皮膚 わずかに赤みが見られる健常皮膚 紅斑や肌荒れのある皮膚 滲出液が滲んだ皮膚 塗り直しの目安
健常皮膚 わずかに赤みが見られる健常皮膚 紅斑や肌荒れのある皮膚 滲出液が滲んだ皮膚
3M™ キャビロン™ ポリマーコーティング クリーム 3M™ キャビロン™ ポリマーコーティング クリーム     3回/日
3M™ キャビロン™ 非アルコール性皮膜 3M™ キャビロン™ 非アルコール性皮膜   1回/日

3M™ キャビロン™ 接着性耐久被膜剤(損傷皮膚・びらん用)

3M™ キャビロン™ 皮膚用保護皮膜 1~3回/週
  • 適応の皮膚状態:健常皮膚およびわずかに赤みが見られる健常皮膚
    塗り直しの目安:3回/日(8時間毎)

    化粧品 販売名:キャビロン クリームa

  • 適応の皮膚状態:健常皮膚から紅斑や肌荒れのある皮膚
    塗り直しの目安:1回/日(24時間毎)

    【スティックタイプ・ナプキンタイプ】
    一般医療機器::液体包帯
    届出番号:13B1X10109000147
    販売名:キャビロン 非アルコール性皮膜 ワイプ
    【スプレータイプ】
    一般医療機器::液体包帯
    届出番号:13B1X10109000148
    販売名:キャビロン 非アルコール性皮膜 スプレー

  • 適応の皮膚状態:健常皮膚から滲出液がにじんだ皮膚
    塗り直しの目安:1~3回/週

    一般医療機器:液体包帯
    届出番号:13B1X10109000264
    販売名:キャビロン 接着性耐久被膜剤(損傷皮膚・びらん用)


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スタッフへの継続的院内教育

※以下のコンテンツをご希望の方は、弊社営業担当者へのお問い合わせ、または、こちらのサンプル・資料請求フォームよりご請求ください。

院内教育動画サンプル(動画の一部をご覧いただけます。)

  • IAD(失禁関連皮膚炎)について

    IAD(失禁関連皮膚炎)について

    IAD(失禁関連皮膚炎)の発生メカニズムと失禁患者への対応、特に「皮膚の保護」について学べる勉強会テキストです。

    再生時間:2分1秒


浜松医科大学医学部附属病院での取り組み事例を読む

スキン-テアの発生時の状況で最も多いのは「医療用テープの剥離時(17.5%)」であり、脆弱な皮膚の患者や強粘着性のテープの使用頻度が高い診療科では、スキン-テアが生じるリスクを低減するための予防的ケアが特に重要とされています。今回、皮膜剤・剥離剤を取り入れたスキン-テア対策の取り組みと、皮膜剤をIAD対策に展開された事例についてお話いただきました。


三豊総合病院での取り組み事例を読む

皮膚は、排泄物・滲出液・排液など刺激性のある液体に長時間さらされることで、浸軟して損傷しやすくなります。接触が続くことで、次第にバリア機能も低下し、ついには皮膚障害に至ることもあります。今回、ストーマケアの事例を中心に、特に滲出液がみられるレベルの皮膚障害のケアとして、3M™ キャビロン™ 皮膚用保護皮膜を使用された事例についてお話いただきました。


近江八幡市立総合医療センターでの取り組み事例を読む

ICUに入室しているクリティカルな状態にある患者は、病態そのものや侵襲の高い治療により全身状態は低下し皮膚は脆弱化するため、皮膚トラブルの発生リスクが高くなっています。特に経腸栄養による消化管関連合併症から下痢を起こすことが多いのが、ICU患者の特徴です。IADを中心とした皮膚の損傷やびらんなどの皮膚トラブルに対して、被膜剤を使用した取り組みについてお話しいただきました。