化学物質による労働災害防止のための新たな規制について
化学物質による労働災害を防止するため、労働安全衛生規則等が改正されました
年間数百件ほど発生する労働災害。もし「労働災害」が起こると企業は大きなダメージを受けます。
厚生労働省「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書」では、化学物質に起因する労働災害は、年間450件程度発生していると示されています。(https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000944980.pdf)
無機・有機化学工業製品製造業 ※
原因物質:トルエン
発生原因: 適切な呼吸用保護具未着用、安全衛生教育不足、換気・排気装置稼働なし、作業者の危険有害性認識不足、作業手順・指示等の不履行、作業主任者・管理責任者等の指示内容の不備、検討不足、危険有害性認識不足
発生状況: 被災者は、反応缶を用いて製造する品種の切替作業のため、上部蓋を開放した上で缶内部に入り、トルエンを用いて缶の内壁の払拭・吹き上げ作業を行っていたところ、意識を消失し、救急搬送された。缶は上部を開放したのみで他に通風箇所は無かった
災害状況:中毒1名
塗装工事業 ※
原因物質:メチルエチルケトン
発生原因: SDSの内容未確認、適切な呼吸用保護具未着用、リスクアセスメント未実施、安全衛生教育不足、換気・排気装置の未稼働 作業者の危険有害性認識不足、作業手順・指示等の不履行、作業主任者・管理責任者等の職務不履行、指示内容の検討不足、危険有害性認識不足
発生状況: 被災者1名のみで、深さ1550mmのエレベーターピットの防水塗装のために、第2種有機溶剤(メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル)が含まれたプライマー(防水下地処理剤)を専用ローラでピット全体に薄く塗っていた。被災者は防毒マスクを着用せず、また送風機等の換気装置を使用しなかったところ、作業開始から約40分たち、塗装面積の約9割を塗り、残った床面を塗装していた際に突如意識を失い、倒れたもの。
災害状況:中毒1名(休業)
可塑物製品製造業 ※
原因物質:シンナー
発生原因: SDSの未入手、適切な呼吸用保護具未着用、呼吸用保護具管理不足・点検不備、リスクアセスメント未実施、安全衛生教育未実施、換気・排気装置未設置、作業主任者・管理責任者等の未選定
発生状況: 被災者は、第二種有機溶剤等及び専用用具を用いてカメラ部品の文字部にインクを入れる作業に従事していた。また、インクが文字部からはみ出た際には、布に塗料用シンナーをしみこませて払拭していた。 上記作業を9日間程行った後、病院を受診し、シンナー中毒の診断を受けたもの。 当該作業場に換気設備は設けられておらず、防毒用の呼吸用保護具も使用していなかった。
災害状況:中毒の疑い1名(休業)
船舶製造又は修理業 ※
原因物質:イソブチルアルコールほか
発生原因: 適切な呼吸用保護具未着用、作業標準書・マニュアル未作成、換気・排気装置未設置、検知・警報装置未設置、作業者の危険有害性認識不足
発生状況: 建造中の船舶の船底内部において、吹付塗装作業を行っていた被災者が倒れているところを、被災者の同僚が発見したもの。使用していた塗料はイソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、キシレン及びトルエンの有機溶剤等を含有する第二種有機溶剤等、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトンを1%を超えて含有する特別有機溶剤等に該当する。被災者は半面形の有機ガス用防毒マスクを着用していたが、送気マスクおよび全面形の有機ガス用防毒マスクは使用していなかった。送気装置及び排気装置が設けられていたが、全体換気装置としての能力が十分ではなかった。
災害状況:心不全1名(死亡)
企業の社会的信頼を失う
労災事故が発生すると、マスコミで取り上げられたり、インターネットの掲示板やSNSでも悪評が流れたりする恐れがあります。企業としての社会的信頼を失い、取引先からの受注停止や売上減少、従業員の離職等に繋がる可能性があります。
コストの増加
労災保険の保険料は、申請が多いほど保険料が上がり、逆に少なければ保険料は下がります。保険料は全額企業負担となっていますから、保険料が上がるのは経費が増えるというデメリットになります。また災害を受けた方への損害賠償金が必要な場合もあります。
監査対象になる
労災が起きると何故起きたのか、会社としての改善対策はされているのかなど、労働基準監督署の調査があり得ます。労災認定が多い場合は、労働基準監督署に抜き打ちで調査をされることもあり、そのような調査では勤務実態や経営者や現場にいる従業員へのヒアリングなどが行われるので、労力と時間が要されます。